Strange Beautiful People

@日野Soul K 2012/10/01

はじめに

前日に台風がやってきて東京はしっちゃかめっちゃかの状態であったが、当日は一転して好天に恵まれたことをまずは感謝したい。

「Strange Beautiful People」。一風変わった可笑しくも素晴らしき人たち、といった意味合いを込めて付けたタイトルだったが、この日の出演者やお客様方にはどう映っただろうか?
「ストレンジなんて心外だ!」とは言われなかったが、少なくとも自分ではこれといってストレンジなことをやっているつもりはない、という人はいたようだ。

そもそも異質、異形というのは特定の価値観に基づいてされる判断にすぎず、違う文化圏に行ってみたら、それまで普通と思っていたものが異質で、異質と思っていたものがポピュラーなものとして受け容れられているということも珍しくない。

それでも今回「ストレンジ」という言葉を使ったのは、今自分たちが暮らしているフィールドにおいてはストレンジと目されやすい方々に集まっていただいたから、というだけのことである。

ではそれぞれのライブの様子を写真付きで振り返っていこう。

Polygon Head

ここ2回ほどイベントに出演していただいている森川祐護が、今回はようやくバンド編成でSoul Kのステージに立った。彼らこそは本日のストレンジ代表選手(笑)である。

最初に森川が1曲弾き語りで演奏。私はリハーサルの様子も拝見していたわけだが、意外にというか、バンド演奏よりも弾き語りの方がPolygon Headのエッセンスを堪能できるように思った。
元々Polygon Headというバンド自体が志を同じくする者同志の集まりではなく、森川祐護というソングライター、ギタリストの作った音楽を演奏する為のプロジェクトであるわけだから、それは当然なのかもしれないが、こうやって最初に弾き語りで1曲演奏することで、観る側にPolygon Headの音楽に触れるための明確なガイドラインが示されたように感じられた。

2曲目以降はバンド形態でどんどん曲を演奏していく。加入し立ての新ドラマー渡部正人(彼はこの後天国のステージでもドラムを叩く)は難易度の高い楽曲をきっちり演奏しきり、更に細かい部分で遊び心も見せる能力の高さを発揮。Polygon Headにおいては10年来不動のベース、内田則文と共に両脇から森川をがっちり支えた。

個人的にもバンド形態でPolygon Headの演奏を観るのはかなり久しぶりだったのだが、単純に楽しい。
低音の迫力が増すと、不思議とステレンジギターポップというよりは、ファンキーなロックバンドのような踊れる音楽に仕上がっていたのは本日の予期せぬ発見。
特に寡作な森川が数年ぶりにお披露目したという新曲は、彼なりのファンクというコンセプトで書かれたものだとかで、これまた難易度が高そうな割に踊れる仕様になっていた。

最後に御馴染みのナンバー「Planet of Rabbit Fur」は、天国から本間太郎を迎えて4人編成で演奏。
キーボードが入ると俄然、音源化されている楽曲のイメージに近い響きになるが、それでも終盤に魅せたスリリングな短いジャムはやはり生演奏ならではのもの。
今日のライブを観て、彼らが活躍できるステージはもっと色々なフィールドに見出すことができると、そう思った。

Polygon Head.com

梶山シュウ

2番手は梶山シュウ。
はぐレ企画第1回目のイベントより出続けてくれているのが広島のミュージシャンであるというのは、なんとも奇特なご縁であるなと我ながら思う。相変わらずベース一本の弾き語りながら、余人に真似しがたい見事な演奏で魅せてくれた。

MCで自分のやっている音楽について梶山氏は、「演奏形態が違うだけで中身はフォークのようなもんである」と述べていた。確かに最初は巧みなループマシン捌きとベース演奏の技術に目を奪われがちだが、よくよく聴いてみれば彼の音楽は実に真っ当なポップス(真っ当やポップという解釈もまた特定の価値観に基づいたものに過ぎないが)である。はっきりした歌メロがあり、インストゥルメンタルはあくまで歌を活かす為に存在するもので、超絶技巧をウリにした音楽ではない。

実際今回のイベントは梶山シュウという人の参加がなければ、タイトルに「ビューティフル」という単語は入れなかったかもしれない(他の2組にそういう要素がないという意味ではない)。ファンキーなバンド演奏の後だっただけに、美しい歌声にうっとりと耳を傾ける時間は濃厚な味わいを持っていた。

強いて付け加えればSoul Kという空間も梶山シュウの音楽を味わうには実に適したロケーションであったと思う。面白いイベントというものは、ただ刺激的な対バンを組むだけで成立するものではないのだなと、これだけ回数を重ねてきてやっと実感する我が身に恥じ入ったものの、単純に一聴衆として、あの時間、あの場所で、あの音楽に触れられたことを幸福に思う。

旅する電気ベース弾き語りスト 梶山シュウ オフィシァルサイト

天国

トリを飾る「天国」もまた、はぐレ企画では馴染みのユニットだ。とはいえ、ここ数回はご無沙汰していたし、個人的にも彼らのライブを観るのはかなり久しぶりなのでとても楽しみにしていた。

今回のフライヤーに載せた紹介文には「背筋も凍るサスペンスをも抱腹絶倒のコメディに変換してしまう云々」と書いたのだが、それを象徴するようなキラーチューン「斉藤」を1曲目に披露し、それだけで完全に場の空気を持って行った。

キーボードの本間もドラムの渡部も、Polygon Headの時とは明らかに違う豪腕な演奏ぶりで暴れるのだが、それでちょうど良いくらいにボーカル宮国の怪演が光っていた。いやはや、すごいエネルギー量だった。

それにしても、天国の音楽はなんと表現すればいいのだろうか?
あえて品性を排除した演奏にもこっそり知性が忍び込ませてあって、その1曲1曲のサスペンス劇場はただ見世物として観ていれば痛快この上ないが、振り返って内容をよくよく考え直してみると恐ろしい意味が含まれていたりする。ストレンジという言葉すら的外れに思えてくる程の個性を持ちながら、非常にわかりやすい(つまりポップ?)という一見矛盾する性質を合わせ持っている稀有な存在だ。
今日は本当に楽しませてもらった。

(仮)天国の情報 天国ライブ日程

おわりに

今回はライブチャージを設定せず、初めて投げ銭制という形式を取った。これに関しては場を提供してくれたSoul Kのご厚意なしには成立しなかった話であり、この場を借りて改めて御礼申し上げたい。

結果的にも投げ銭制にして良かったと思っている。会場に集まったお客様の数は決して多くはなかったが、その盛り上がりぶりが相当のものだったことはずっと後ろで観ていたのでよくわかる。皆それぞれにお目当ての演者があって足を運んでくれたであろうに、出演者を含めた全員が最初から最後まで席を立つことなくライブを鑑賞し、そして楽しんでいた。全員がである。こんな光景は見たことがない。

集まった投げ銭の額にしても正確な数字は伏せるが、人数からすれば十分すぎるくらいのものであった。それだけ満足度の高い内容だったのだと思っている。それだけにもっと多くの人達に観てもらいたかったという気持ちもまた拭い切れない。あまり聴衆の数に拘りすぎるのも良くないが、たかだが50人かそこらのキャパシティの会場を埋めるだけの努力は、企画を立てる側としてはして然りというもの。

今回はあえて猛省して締め括ろうと思う。次に向けて。


ジンボ アラタ
Author ジンボ アラタ 90 Articles
東京都出身。日本工学院八王子専門学校コンピューターミュージック科卒業。その後は音楽とは別の道へ進むが、再び音楽の世界になんらかの形で関わって行こうと決意し、2007年より音楽イベントのオーガナイズを始める。