サブカルヒステリーアワー3 ~情熱と悩殺のロマンチズム~

@高円寺Club Mission’s 2010/06/27

はじめに

6月27日。
梅雨真っ盛りの季節であったが、幸運にも天気も持ちこたえてくれて、絶好のライブ日和だった。
それにしてもなんという熱気を帯びた夜だったのか。
あの日の4組の出演者とたくさんのお客様には、この場を借りて改めて御礼をしたい。
ごく簡単にではあるが、ここで写真を交えながらライブの様子を振り返ってみようと思う。

日比谷カタン

このイベントタイトルを象徴する存在といえよう。
メイン、サブ問わず様々な文化をその内に取り込んでいながらも、『日比谷カタン』というインターフェースを通じて発信されるそれは、必然的にサブカル的に我々の目に映ってしまう。

ライブアクトとしてどの番手でもこなせる力量の持ち主だが、まず最初にイベントの指針を提示するという意味において、彼以外のオープニングアクトは考えられなかった。

「?」に始まり「!」に終わる。
人は日比谷カタンのライブを観ると、そこに様々なギャップを見出し戸惑う。見た目と中身とのギャップ、演奏形態とそのプレイとのギャップ、声色のギャップetc…。
我々は最初に「なんだかよくわからないもの」を知覚するのだが、気づけば「すごいもの」を体感して驚かされている。

そんなサブカル見世物師である日比谷カタンは、同時に器用なエンターテイナーを演じることもできる。
この日はイベントの趣旨に則り(?)ウルトラマンエースやゴジラのテーマなど、アニメ・特撮系のメドレーを披露して見事に観衆のハートを撃ち抜いて見せた。(実は今回のウルトラマン風フライヤーをデザインしてくれたのも日比谷氏。今回のイベントと特撮は思いのほか相性が良かった)

得物はアコースティックギターながら、ヘヴィメタルさながらの重々しくて激しいプレイと、スパニッシュ風の切れ味鋭いプレイの応酬には否応なしに目を惹かれた。それでいて演奏が終わると涼しい顔で軽妙なトークを繰り広げ、またもやそのギャップに肩透かしを食らう。最後の最後まで「?」と「!」のオンパレードだった。

日比谷カタン Official Website

(2017/7/2(約7年後)追記)

日比谷カタンさんに1番手を務めていただいたが、見事にこちらの意図を汲んでくださり、単に自身のステージングで魅せるだけでなく、イベントそのものへのナビゲーションもしてくださった。
また、大変素晴しいフライヤーを制作していただいた。ありがとうございました。

ゴロバン

続いて、スーパーゴロバンタイム発動!
「エンターテイメントとは何ぞや」という問いかけに対する一つの回答といえるライブだった。

演奏中だけでなく、入場から退場に至る全ての過程をショータイムと化した、けばけばしいまでの白銀の40分間。時代錯誤も甚だしい出で立ちとパフォーマンスに最初は失笑していた観客も、いつの間にか巻き込まれ取り込まれて、本気で抱腹絶倒し、気づけば一緒に踊ってしまっている。この持って行き感は一体なんなのだろう?

オープニングナンバーは、コンサート(彼らのライブはこう呼ぶのが正しい)の定番「告白タイム」から。『告白タイムは土曜のミッドナイト』という、もはやパワーだけのフレーズが頭から離れなくなるマジックは彼らにしか使えないものだろう。

普通、何度も見聴きしている大好きなバンドならともかく、初めて観るバンドで一緒に歌ったり踊ったりしたくなることはなかなかない。あっても実行に移す勇気はそうそう持てないものだ。
ところがゴロバンはそれをさせてしまう。強要されるわけでもなく、我々は日比谷氏がいうところの「母性本能」に突き動かされて、ついついゴロバンを応援してしまうのだ。決して美男子揃いというわけでもないのに(失礼)、完璧なまでのアイドルバンドぶり。ニクイ。

GOROBAHN WEBSITE

(2017/7/2 追記)

ゴロバンは本当にみんなが笑顔になれるバンド。
カタンさんは「母性本能をくすぐるバンド」なんて評しておられたけれども、確かにどこかずっこけてて、決して「うわー、カッコいい」という風にはならないのだが、その隙のある感じこそがゴロバンの魅力。
基本的に私は人前に立って演奏する者は上手くて当たり前と思っているのだけれども、彼らは数少ない例外の1つ。本当に最高のバンド。

伝承歌劇団~エウロパの軌跡~

あらためて画になるバンドだと思った。煌びやかな中世風の衣装もさることながら、ライブ中の各人の動きがキマっていて、特撮ヒーローのアクションショーを観ているような気分だった。方向性は違えど、彼らもゴロバン同様に徹底したエンターテイナーだ。

毎回新たなシナリオが用意される(再演される演目もあるが)伝承歌劇団のライブ。今回も新作を用意して臨んでくれたが、その内容についてはここでは敢えて語らない。それは生で観た人だけが噛み締めればいい。

語り部Algosの力強い物語りを挟みながら、相応のエネルギッシュさでもってライブは進む。抜群の歌唱力を誇る声楽士Dahnaの歌声をヘヴィな演奏が後押しする。ロックバンド単体で十分成立する技量があればこそ、彼らならではのステージングも映えるというもの。

演目終了後はゲストに声優の松本さちを招いて2曲披露。その内1曲目は今回がフルコーラス初披露だったとか。
男女混声になることで、それまでのシンフォニックメタル風な要素にソウルフルな響きが加味され、半分燃え尽きた感のあったメンバー達もここで再燃。ステージも客席も揃って拳を振り上げて盛り上がる様は、さながらJAM PROJECTのコンサートのようだった(笑)

伝承歌劇団~エウロパの軌跡~ official website

(2017/7/2 追記)

伝承歌劇団~エウロパの軌跡~はアニメ界にも繋がりのあるバンドで、この日は声優の松本さちさんがゲスト参加されたスペシャルバージョン。
話していて、「いつもはアウェイなことが多い」なんてことを聞いていたのだが、この日は本当に楽しい一日だったと言ってもらえて嬉しい限りだった。

▲s(ピラミッドス)

トリを飾ってくれたのは▲s。ガンガンに盛り上がった伝承歌劇団のステージの後でやりにくさもあっただろうが、音楽性もステージングも全く違った形で見事に盛り上げてみせた。その佇まいはさながら中東風チンドン屋といったところか。もちろん褒め言葉だ。

『エレクトリカルパレード』や『魔法使いサリー』といった誰でも知っている楽曲から、ロシアや中近東のトラディショナルソングまで、まるごとジプシー風にアレンジして聴かせるわけだが、日本人には決して耳慣れた音ではないのにも関わらず気持ちいいくらいに楽しい。エンターテイメント云々以前に、まず音楽自体が自然に踊れるノリの良さを持っているのが素敵だ。芯からお祭バンドである。

同時にコント満載・ネタ満載のステージでは笑いも絶えず、ダイナマイトボディを惜しみなく振り撒いてくれたバーレスクダンサー・サフィの登場には会場中が沸いた。男子は狂喜、女子は羨望。素直に喜ぶお客さんたちが愛おしい(笑)

ライブ後半ではさらに幻覚少女モモちゃん(?)がゲストに加わり、寸劇も交えつつ歌を披露してくれた。まだ10代だというのに存在感のあるボーカルで驚いた。
最後は再びサフィも登場して、てんやわんやの大盛り上がりの内に終幕。

PYRAMIDOS(▲sピラミッドス) -日本発のジプシーバンド

(2017/7/2 追記)

▲sはこの当時はバリバリのジプシーバンドだった(今もジプシーバンドであることに変わりはないが)。特にリズム隊がダラブッカなどのエジプト太鼓中心だったことの違いは大きい。変拍子でも不思議と踊れるスピード感のあるビートが、イベント終盤で疲れてきた体を奮い起こしてくれた。
今ではすっかりメジャーになった「チャラン・ポ・ランタン」のももちゃんがゲストで参加してくれたことも良い思い出だ。

おわりに

エンターテイメント色の強い出演者を集めて、お祭りみたいなイベントをやりたいという想いが前々からあった。受け手の感想はそれぞれあると思うが、自分の中ではやっと思った通りのことが出来たという感慨がある。

お祭りの楽しさというのは、まずその空気が不可欠だ。
屋台、お神輿、踊り、お囃子など、祭りを構成する個々の要素はあれど、それらを単体で味わうのと、お祭りという空気の中で味わうのとでは印象が大きく異なる。金魚掬いや射的に気分を高揚させ、綿菓子やりんご飴がたまらなく美味しそうに見えてしまうあの感覚は特別なものだ。

それぞれアプローチは違いつつも、1つのイベントの中で打てば響き合うものを引き出してくれた出演者たちは勿論のこと、観に来てくれたお客様たちもまた祭りの空気を作った立役者だ。双方が最初から最後まで高いテンションを維持していてくれたからこそ、今回のイベントは成立したのだと思う。心から感謝したい。

またいつか、こんなお祭り騒ぎをしたいものだ。

(2017/7/2 追記)

この年、私はライブハウスで働き始め、ここからはぐレ企画としての活動はペースダウンしていくのだが(元々年に1~2回しかやってなかったけど)、このイベントは本当に色々な意味で思い出深いものになった。

初顔合わせのバンド同士も少なくなかったにもかかわらず、演者から演者へ、何かしらネタやメッセージが引き継がれていく形でライブが進み、対バンイベントの楽しさというものが実によく味わえる内容だったと思うし、お客様にも会場が一杯になるくらい来ていただけた。

2017年8月11日に開催を予定している「サブカルヒステリーアワー5 ~真夏の大文化祭~」では、再びゴロバンと伝承歌劇団~エウロパの軌跡~の対バンが実現するが、彼らの共演もこの日が初だった。
こちらとしては勿論、観ている側も楽しいし、やっている側も楽しいであろう組み合わせを考えてブッキングするわけだけれども、特にこの2組は相性が良かったようで、その後も色々と共演を重ねて仲良くやっているようである。そういうことがあれば、それはもうブッカー冥利に尽きるというものだ。

この日、彼らとは初顔合わせになるダイナマイト☆ナオキ先生やDJの市川へるくんと、どういう風にぶつかるのか楽しみである。

余談であるが、高円寺Mission’sは立ち退きというやむを得ない事情により、今年1月に閉店した。
普通に客としても何度も足を運んだライブハウスであり残念である。この場で改めて今までの感謝を述べたい。ありがとうございました。

今回のフライヤー(制作:日比谷カタンさん)


ジンボ アラタ
Author ジンボ アラタ 96 Articles
東京都出身。日本工学院八王子専門学校コンピューターミュージック科卒業。その後は音楽とは別の道へ進むが、再び音楽の世界になんらかの形で関わって行こうと決意し、2007年より音楽イベントのオーガナイズを始める。