第2回 Whereabouts Records 竹内一弘代表に訊く

ハンガリーの音楽シーンとは?その他興味深いお話あれこれ

僕が若かった頃にはできなかったことを、今の若い人たちに与えてあげたい

――― 竹内さんご自身も、ソロユニット「Psychedeism(サイケデイズム)」という形で作品をリリースされてますね。竹内さんがどういう音楽をやってこられたのかということもお聞かせください。

竹内: 僕はもうオールジャンルです。クラシックギターを11歳ぐらいから始めて、それから当然ロック。レッド・ツェッペリンとかジミ・ヘンドリックスとかそういうのが大好きで…。その後はジャズとかフュージョンとか…まぁ歳なんで(笑)、何でも聴いてるんですよ。

ちょっと変な話だけど、僕は日本人がロックをやってる姿が…いや日本人じゃないな、自分がギター持ってステージに立ってる姿があんまり好きじゃなくて。本当はロックをやりたかったんですが、自分から見ても格好悪いんですよ。だからそこは諦めた。

2000年くらいからコンピューターで音楽を作ることが一般的になってきて、誰でも音楽を作れるようになってきました。そうすると、道が開けてくる。それまで、1980年~2000年ぐらいまでは、アマチュアミュージシャンは何もやれることがなかった。インディーレーベルもそんなにないし。僕もメジャーレーベルのオーディションを受けてスタジオミュージシャンになりたくて色々やっていましたが、その高いハードルを越えない限りは絶対プロミュージシャンになれなかった。2000年か1990年代の途中までは。

その後は、インターネットも関係してるけど、コンピューターを使って誰でも音楽を作れるし、発表できるようになった。そんな中で多くの人が見出したのがテクノやアンビエント・ミュージックですよね。当然僕もそっちに行ったわけですよ。それは好きってわけじゃないけどやりやすい、そこなら自分の居場所があると思ったので。

Psychedeism(サイケデイズム)の1stアルバムに関しては、あれはレーベルを立ち上げて1枚目の作品で、とにかく何か出さなきゃって理由で作ったくらいのものなんです。じつは他の名義でCDも出しているけどプロフィールは公表していません。

――― 以前、違う方にインタビューしたときに聞いた話なんですが、今おっしゃったテクノやアンビエントなどの音楽とロックバンドだと、音源の制作にかかる費用が全然違うとか…。

竹内: 違いますね。

――― そうなると当然、作品を作って売りに出して、それがリクープ(費用回収)するまでのラインもバンドよりは低いじゃないですか。そういう金銭的な面でテクノやアンビエントに居場所を見出した人が多いということも言えそうですね。

竹内: それはあるでしょうね。ちょっと辛辣な話になるけど、僕たちが若い頃ってタワーレコードに自分のCDが並ぶなんて夢のようだったでしょ?それが今は誰でも並んじゃう。あれは何なのかな?ショップ側の意見は全然わからないけど、売れなかったら返品できるんですかね?

――― 僕も詳しくは知らないのですが、リスクが低くやれるというのはあるでしょう。インディーズのバンドだからもちろん仕入れ自体が少ないだろうし、タワレコで出すって言ったら皆必死になって宣伝するから、少なくともファンの子たちや友達は買ってくれる。少ない仕入れで割良く売れるみたいな感じで、小さな利益をコンスタントに稼げるのかなと想像してます。

竹内: 短期間で、それこそ1週間くらいで売るみたいな…ショップ的にはその中からヒットが出ればいいって感じなのかな?

――― タワレコの話が出ましたけど、今「音楽市場が冷え込んでいる」という話がず~っとされていますよね。個人でレーベルをやっていて、それを実感することってありますか?

竹内: ああ、もちろんもちろん。もうCDマーケットは完全に死んでますから、商売として利益を出そうなんてこれっぽっちも考えていません。変な話だけど、僕が若かった頃にはできなかったこと、それを今の若い人たちに与えてあげたいというのが一番の目的なんですよ。それだけかな、モチベーションは。ほぼ間違いなく利益は出ませんから。

――― じゃあ仮に、竹内さんも儲かるためには、どれくらい売れないといけないんですか?

竹内: 諸々の費用をペイできるラインが300枚くらい。そんなにハードルは高くないですけど…500枚売れたら、ちょっとだけアガリが出るのかな。

――― では、レーベルとしての仕事の部分でのお金の話になりますが…。
例えば大手のレーベルだと、まずレーベル側が製作費をまとめて出して、売り上げの中から回収していくというやり方がありますよね。

竹内: うん、そうですね。それが昔ながらのやり方だけど、今のインディーズレーベルでそれをしているところはほとんどないでしょうね。

レーベルによって違うけれども、「印税的なものをアーティストには一切払わない」というところはものすごく多いです。レーベルが自分の資金でCDをプレスします。それだけです。もし大ヒットして利益が出たら何%かバックするけど、売れなかったらごめんね、お金一切払いませんよっていうパターンが多いですね。

でも、曲がりなりにも商売としてやっている以上、あるいは大人同士の付き合いである以上、そんな子どもじみたことやってても何の意味もないので、僕は契約時に必ず印税を払うようにしています。作品を聴けば制作がどれほど大変なものだったか判りますし、プロフェッショナルな人に対してお金を払わないというのはあり得ないですから。遊び感覚で音楽を作っている人もいるでしょうけど、僕はそのような人は相手にしないですね。

――― ちなみに、WRで出してる作品で売れてるものはありますか?

竹内: コズマ・オルシ・クァルテットの「Hide and Seek」が一番売れてるのかな。あれが2010年に出したうちの4枚目かな。その当時もちろん告知はしたけど、その後一切何もしてないのに、今でもちょこちょこ売れてるんですよ。なんでそうなってるのかわからない(笑)。

――― これは僕も聴きましたけどジャズの作品ですよね。でも彼女は本国ではジャズに限らない人ですよね。

竹内: そうなんですよ。調べました?

――― はい。イケイケなダンスミュージックとか歌ってて、最初違う人かなと思いました(笑)。

竹内: このあいだハンガリーに行ったときにオルシに会って、「ダンスミュージックとジャズとどっちの方がいいの?」って聞いたら、「今はジャズの方がいいんだ」って言ってました。


ジンボ アラタ
Author ジンボ アラタ 102 Articles
東京都出身。日本工学院八王子専門学校コンピューターミュージック科卒業。その後は音楽とは別の道へ進むが、再び音楽の世界になんらかの形で関わって行こうと決意し、2007年より音楽イベントのオーガナイズを始める。