黒沢ダイスケProgressive Band ワンマン公演

@吉祥寺シルバーエレファント 2016/03/26

ドラム3台プログレ祭

ここ数年、生活との兼ね合いがなかなか難しくてライブに行く機会がめっきり減っていたのだが、今月はなんと3本のライブに行くことが出来た。どのライブも素晴らしい内容で甲乙が付けられるものではないのだが、インパクトという点において特に強烈だった1本に絞ってレポートを書こう。

日にちは3月26日の土曜日。場所は吉祥寺の老舗シルバーエレファント。
黒沢ダイスケProgressive Bandのワンマン公演。

バンドについて

ライブの内容に入る前に、バンドについて少しだけ触れておきたい。

このバンドの前身と言っていいと思うが、リーダーでギター担当の黒沢ダイスケは、今から10年以上も前、軌道共鳴というプログレハードバンドを組んでいた。彼がまだ学生だった頃であり、私は当時追っかけのようにほとんどのライブに足を運んでいた。

軌道共鳴の活動は数年続いたのだが、ボーカルありきでやっていたバンドにもかかわらずボーカルが抜けたかどうかして、自然と活動は停止状態に。メンバーが個々にやっているセッションバンドをブッキングさせていただくなどの関係は続いていたものの、軌道共鳴というバンドそのものとは自然と疎遠になってしまっていた。

そうこうしていると、インストバンドとして『黒沢ダイスケ Progressive Band』というプロジェクトがいつの間にか始まっていた。ベースには軌道共鳴時代からの盟友である上田哲也、ドラムには自分も顔見知りだった渡部正人(彼にははぐレ企画のイベントにも天国のサポートメンバーとして何度か出演していただいている)が入っているという。

あーこりゃ面白そうだとは思ったものの、2011年といえば私はライブハウスのスタッフとして夜を中心に働いていた頃であり、なかなかどうしてライブと自分の都合が上手くマッチすることがなかった。そんな風にうかうかしていたら数年経ってしまったのだが、ここに来てようやく彼らのライブを観る機会に恵まれたわけである。

しかも今回はワンマン公演かつ、歴代ドラマー3人揃い踏みでドラムセットも3台組むという大ゴト。こりゃ期待に胸膨らむというもの。

公演当日 第1部

ステージ上には既に3台のドラムセットが横並びにセッティングされており、その前に所狭しと上物チーム(今回に限ってはベースも上物として扱う)の楽器が並べられている。シルエレの決して大きくはないステージ上だけに余計に物々しく見える。

1曲目:Piraniha Bytes

1曲目は「Piraniha Bytes」。軌道共鳴時代からやってる古い曲だ。テンションの高い曲調だし、テクニカルな見せ場も存分にあるので1曲目にはもってこいだったかも(本人たち的には1曲目から疲れる?)。

ドラム3台で刻むビートは当然ながら音量が半端なく、しかも割とそれぞれ思い思いにというか、ここがキャラが出るところなんだろうけど真面目にリズムを刻む人、好き放題やる人、その両方を行ったり来たりする人が混在している感じで、そういう意味でもハチャメチャ感が止まらない。

たださすがにシルエレは彼らとは長い付き合いなだけあって、これだけの大ゴトでもドラムと上物のバランスは最大限取るようにしている努力が感じられたし、実際全てのパートの音がちゃんと聴き取れる状態でこちらの耳に届いていたのは素晴らしい。

2曲目:Agartha

MCを挟み2曲目はYou Tubeにもアップされている「Agartha」。こちらはどっしりと大曲感のある作りなので少しは大人しく…なるわけはなかった。

今回のドラム3台ライブは初代ドラマー渡部くんが言い出しっぺらしいけど、彼はかつて唐突に難病に陥ってバンドを離脱したという経緯があったにもかかわらず、今日は誰よりも暴れていた。本人はリベンジマッチだと言っていたが、リベンジを通り越して殺しにかかっていたな(笑)

自分は大菊さん(ここでは2代目ドラマー)も相当に手数の多い人だと思ってたんだけど、今日はこと手数という点においては渡部くんが頭2つくらい抜け出ていた気がする。MCでは「誰か1人ちゃんとしてくれていれば他の2人は好き勝手やっていいんだ」なんてことも言ってたけども、本当にそんな感じ。

ただそこはやはりプロ。好き放題やっていても、そこには確かな技術の裏付けがある。それにプロなればこそ、普段の現場ではまず求められるプレイがあるわけで、自分の持てる技術を片っ端から披露する機会なんてもんは早々あるもんじゃないし、我々としてもそういうものを観る機会は滅多にない。そういう意味では演者と観客で双方のニーズが上手く合致したライブだったんじゃないかと。

 

3曲目:オリジナル曲

3曲目でようやくドラムが1人体制に変わり、各ドラマーのオリジナル曲を1曲ずつ演奏していくという趣向に。

まず1番手は渡部くん。ここでもテンポが速くてやかましい曲を選ぶ。
正直なところ、ドラム2台減ったことでグンと音圧が下がったという印象はほとんど受けなかったので、今日のやかましさの大半は渡部くんが担っていたのだと思う。やはり殺しにかかっていたか。

次は現ドラマー松尾さんの曲。ここでようやく耳休めタイムだったかな?冷静に見ればこの曲も結構色んなことやってるんだけど、それまでとの対比で落ち着いた雰囲気に聴こえてしまうという。
松尾さんに関しては初見だったのだが、彼は今日の3人の中で1番真面目にリズムを刻んでいた気がする。それでいて、ちょっと余裕があるとスティック回しを連続的に披露するなどの細かい技も見せてくれた。

ソロシリーズのトリは大菊さんだったのだが、彼はオリジナル曲はやらない、代わりに軌道共鳴時代の曲をやると言う。ボーカルもいないことだし、それで軌道共鳴時代の曲といったら「D.N.A.」かなと思っていたら、なんと「Orbital Resonance」だという。しかも自分で歌うという。これはビックリ。決して速い曲じゃないけど叩きながら歌えるような曲だったろうか?と心配したが、なかなかどうして様になっていた。

それにしても初期の曲を聴くとどうしても当時の感覚がよみがえってしまう。細かいキメの1つ1つがまた今でも変わってなくて、その度についついニヤけてしまう。何年ぶりに聴くのかわからないくらいなのに、自分でもイチイチよく覚えてるなと思ったけど。

ここで第1部が終わり、休憩を挟んで第2部。

第2部

2部はまずドラム大会から。これまでもずっとドラム大会だった気がするが、ここでは上物チームを外しての完全ドラム大会。

ジャンケンで順番を決めてそれぞれソロを披露。全員手数の多いタイプなのは違いなかったけど、それでも連続的に聴くと随分と性格の違いを感じるものだった。その流れで3人ドラムセッションみたいな感じで一通り叩き倒した後、上物チームを呼んで再び曲のコーナーに。

2部ではカヴァー中心のセットリストで、ジェフ・ベックの「Red Boots」、クリムゾンの「Red」と「21世紀の精神異常者」と続いた。「21世紀~」では再び大菊さんがボーカルを取った。

このカヴァーコーナーでは渡部くんが秘密兵器のMPC(か何か)を使ったりと、これまで以上に自由気儘なプレイ風景だった。確かに遊ぶんならオリジナルよりカヴァーの方が遊びやすいってのはあるかもね。

個人的に「Red」には非常に思い入れがあるから色々口を挟みたくなるんだけど、ここではいい感じにガチャガチャしててそれが良かった。あんまりカッチリしてるとクリムゾンぽくないと言うか、この曲は混沌とした感じが出てた方がいいので、それはこの手練れメンバーが普通にやってもなかなか出ないであろうものなので、よくぞこんなに掻き回してくれたと言いたい。

この辺まで来るとこっちとしてもさすがに聴き疲れ感が出てきて、何をやっているのか半分くらいわからないような状態になってたと思うのだが、本編ラストからインターバルを空けずにアンコールに入って「D.N.A.」をやってくれた時はまた目が覚めた。

これはバンドにとっても、いちリスナーである自分にとってもまさしく始まりの曲で、これを聴くと否が応にもテンションが上がってしまう。アレンジもほとんど昔やっていた頃と変わらない感じで(若干当時と違う部分もあったようだが)嬉しい。

それにしても10年前にも今とほぼ変わらないクオリティでこれらの曲をプレイしてたんだから、やっぱりみんな大したもんだ。勿論本人たちにとっては色々と当時よりも進化している部分はあるんだろうけれども、それはそれとして、ね。

時間的にもたっぷりだったけれども、本当に腹にずっしりと溜まるようなライブだった。

見逃さなくてよかった。


ジンボ アラタ
Author ジンボ アラタ 90 Articles
東京都出身。日本工学院八王子専門学校コンピューターミュージック科卒業。その後は音楽とは別の道へ進むが、再び音楽の世界になんらかの形で関わって行こうと決意し、2007年より音楽イベントのオーガナイズを始める。