第1回 海保けんたろー氏に訊く「OASってなんですか?」

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賢くライブを打てば黒字は出せます

――― プレミアムサポーター制度に関して質問させてください。
先程海保さんが例に挙げられたような手厚い特典を用意するのは、費用的にかなり大変なことだと思います。例えば実際にOASをやっていて、そこそこ成果の上がっているバンドがいたとします。その人たちが「そろそろいいかな?」と思ってプレミアムサポーターを導入してみたら、それまではそこそこ黒字だったものが、特典の為の支出がかさんで赤字に転落するということはあり得ると思いますが…。

海保: その通りです。なのでそこはきちんとルールを設けるつもりでして、実際の数字はこれから修正するかもしれませんが、今のところ無料メルマガ読者数が2000人に達しないアーティストには、プレミアムサポーター制度の導入は認めないつもりでいます。これは僕らが審査するとかじゃなくて、今言われたような問題を避けるためです。

もっと言うと、このラインを超えたらプレミアムサポーター制度を始めなきゃいけないというものではなくて、そこはアーティストの自由にしてもらおうと思っています。例えばうちは無料メルマガ読者数5000人いくまで始めませんよ、うちは10000人いくまで始めませんよ、っていうのもありです。

――― なるほど。ちなみに実際にプレミアムサポーターになってくれるファンというのはどれくらいいるものと考えてらっしゃいますか?

海保: 僕らはかなり低く見積もっています。5%はいないだろう、くらいの考えです。だから無料メルマガ読者2000人に対して100人いないくらい。資料請求してくださった方に対しては、この辺りの点についてもシミュレーションを提示しているんですが、プレミアムサポーターが100人いれば、OASにかかる年間の収支は、まぁ賄えるだろうと僕らは計算しています。もちろんレコーディング費用にどれだけかけるかでだいぶ違ってくる話ではありますが…これがもし1000人とかだったらもう余裕で食べていける計算になりますけど。

ただ、いずれにしても僕らの考えではプレミアムサポーターというのは収入のサブ的要素で、メインはライブなんです。僕らもシミュレーションは色々してるんですが、やはりライブが収入のメインになるだろうと。

――― 僕はライブハウスの人間なので、ライブ1回におけるお金の流れというのは、ある程度想像できます。実際そこまでライブが主と言い切れるものですか?

海保: もちろん黒字が生まれるようなライブの組み方を考える必要はあります。僕は前々から特にアマチュア・インディーズバンドマンに対して言いたいことがあったんですが、とにかくもっとライブを賢く組まなきゃダメだよって言いたいんです。

例えば東京だとキャパ200~300人くらいのハコってすごくたくさんあるわけですけど、そういうところって大体ノルマがチケット2,000円の15枚とか20枚とかですよね。そういうところに月3本とか出演して、毎回ノルマを割ってるみたいなバンドがいて、それが本当に理解不能なんですよ。

――― ああ…いますいます(苦笑)

海保: もちろんライブをやりたいって気持ちはわかるんですけど、そこは置いといてもうちょっと考えようぜって…。

実際問題、月に3本くらいのペースでライブやってて、平均動員が5~10人くらいのバンドがいたとしますよね。彼らがライブを2ヶ月に1本に絞り込んで、そこでちゃんとお客さんを集めたら20~30人くらいは動員できると思うんです。そうしたら今まで月3回ノルマ割れで発生してたマイナスがなくなって、プラスの収支が生まれるわけです。

そういう風に賢く立ち回ることで、音楽活動の為に我慢してやっていた音楽と全然関係ないバイトも減らせて、音楽に使える時間が増えるんですよ。

OASの思想に基づいて言うなら、「音源は宣伝媒体であり、ライブが商品である」ということなんです。いい曲作ってメルマガ読者の人に気に入ってもらって、ライブという場できっちりお金を回収するんだと。

――― 本当にそうなんですよね。知名度のないバンドって音源も自主制作で流通に乗ってるわけでもないし、どうしてもライブが最大のプロモーションの場だと思ってしまいがちなんですよね。もちろんライブハウスの人間としてはそれも大事なことだと言っていきたいのですが、動員が5~10人前後のバンドの対バンはやっぱりそれくらいしかお客さんを呼べない場合が多いわけで、実際のところ大したプロモーションにはならない…。

海保: そうなんです。例えば2,000円×15枚ノルマでライブをやるとしたら、それはつまり30,000円で出演枠を買っているという言い方もできるわけで、そこは当然30,000円分のメリットがなくてはおかしいわけです。でも実際に30,000円分のプロモーションになっているのかと言えばなってないんです。

さらに僕の個人的な意見ですが、アーティストをすごく応援してくれる人たちの財布のお金は無闇に使わせてしまってはいけないって思ってるんです。毎回ライブに来てくれる熱心なお客さんがいても、やはり月3本とか来させるのは結構きついと思いますし、しかもその人たちがチケットに払ってくれたお金はノルマ消化で消えてアーティストには残らない。すごく勿体無いんです。

――― 精算=支払いタイムになっているバンドってのはよく見かけますね。

海保: そんな1回30,000円の買い物を月に2回も3回もやって湯水の如くお金を無駄にするくらいなら、無料のメルマガでプロモーションする方が全然効率がいいだろうと考えてるんですけどね。


ジンボ アラタ
Author ジンボ アラタ 102 Articles
東京都出身。日本工学院八王子専門学校コンピューターミュージック科卒業。その後は音楽とは別の道へ進むが、再び音楽の世界になんらかの形で関わって行こうと決意し、2007年より音楽イベントのオーガナイズを始める。