第1回 海保けんたろー氏に訊く「OASってなんですか?」

音楽活動支援サービス「Frekul(フリクル)」とは

リスナーに支持されるアーティストが売れるんじゃなきゃ、おかしいじゃないですか

――― 逆に言うと、現時点で自分たちの音楽活動に対する売り上げから中間マージンをあれこれ差し引いたものが収入になっている人たち、つまりメジャーなり、インディーズでもちゃんと事務所に付いて活動しているような人たちこそが、OASを始めることでトクをするという風に受け取れますが、その人たちは当然事務所と契約を交わして活動しているわけですから、急に「こっちがいいから乗り換えよう」ってわけにもいきませんよね?

海保: もちろんそこのシフトは時間のかかる部分ですが、必ずしも事務所を辞めてフリーにならなきゃOASを始められないという風には考えてないんです。例えば事務所と話し合って、音源の無料配信を認めてもらう代わりに、ライブでのギャラやプレミアムサポーターから入ってくる会費などをアーティストと事務所で上手に分配する、などのやり方は全然ありだと思ってます。それと、今そういう形で活動していない、あまり知名度のないアーティストほど、OASが広まっていくことでチャンスが生まれると考えているんですよ。

――― ほう。何故でしょう?

海保: 5年とか10年前くらいの話になるんですが、その頃ってバンドが売れるかどうかというのは、いかに力のある業界人に気に入られるか、力のある事務所に目をかけてもらえるかという部分が大きかったように思うんですよ。たくさん宣伝費をかけてもらって、テレビとか色んなところに露出して知名度を得ていくという風に。

OASではそういう神様みたいな人はいなくて、僕らも運営に関しては極力マシーンでありたいと思ってるんです。このシステムを使って僕らが誰かをプロデュースしたりとかそういうのは違うだろって思いますし、審査みたいなことも一切やるつもりはないんです。とにかくリスナーに支持されるアーティストが自然と売れていく、という風にしたいんです。ですから僕らメリディアンローグもOASをやっていくわけですけども、そこは当然ガチバトルですよね(笑)

――― 売れたかったらとにかくいい曲作ってメルマガで配信しろってことですね。

海保: そうですね。最低でも3ヶ月に1回は新曲を配信するっていう縛りはつけようと思っています。

――― 定期的に新曲を配信するということは、当然定期的にレコーディングしなくてはいけないわけですよね。しかも無料で配る曲だからといってやっつけ仕事で録ったものではなくて、CDにして売りに出せるレベルのものを用意しなくてはいけないわけですよね?そういうキチンと作り込んだ曲を定期的に用意するのは費用面でもかなり大変なのではないでしょうか?

海保: 確かにそうです。ただそういった費用をなるべく抑えるためのノウハウや情報を提供することは出来るんですよ。例えば何曲か録って、ミックスをして、マスタリングをしてという工程があって、それをどこどこのスタジオでやったら幾らかかるけど、あそこのスタジオなら幾らで済むから紹介するよ、みたいな。

資料請求してくださった方には、そういう収入と支出のシミュレーションみたいなものは送ってるんですが、レコーディングの費用っていうのは本当にまちまちなんで一概には言えないですね。4ピースのロックバンドと歌なし生楽器なしの電子音楽じゃ全然違ってきますし、スタジオやエンジニアによってもピンキリです。

ちなみにメリディアンローグの場合だと、ボーカルの家に宅録環境があって、彼はレコーディングに関しても相当研究してるんで、かなりの部分は自分たちで出来るんです。ドラムを録る時はさすがにスタジオ使いますけど、このやり方だとかなり費用を抑えられます。

――― 費用の多寡は別にしても、アーティストにとって楽曲は大事な「作品」なのだから、プロモーション用に短く編集したり音質を落としたものでもない楽曲を無料で配ってしまうなんてけしからん!という意見も出てきそうですが…。

海保: 極論を言ってしまえば、そういう風に言ってくる人たちが本気でそう思っているんなら、今まで通りの商売を続けていけばいいじゃんて思ってるんですよ。売り手側だけでなく、アーティスト側からも同様の意見は出てくるだろうと思ってますけど、そこは選んでもらって構わないんですよ。今まで通りのやり方でも、こっちに来てもらうのでもご自由にどうぞって感じで。ただ僕としては、そうやって商売してきた結果が今の音楽業界なんじゃないですか?というのがあるからOAS始めたんですけど。

――― OASがこれから軌道に乗って行けば、そこは二手に別れるでしょうね。

海保: もちろん僕らは自分たちのやり方が正しいと思ってやっていきますけど、今後いまチカラを持っているところからの反発みたいなものも、あるんじゃないかとは想定してます。


ジンボ アラタ
Author ジンボ アラタ 102 Articles
東京都出身。日本工学院八王子専門学校コンピューターミュージック科卒業。その後は音楽とは別の道へ進むが、再び音楽の世界になんらかの形で関わって行こうと決意し、2007年より音楽イベントのオーガナイズを始める。