競技者の視点

今回のコラムは熟考した末ではなく、かなり思いつきで書き始めた。
後から読み返して自分で首を傾げることもあるかもしれないが、日頃から思っている事ともリンクする内容であるので、そのまま勢いで書いてしまおうと思う。

ダーツのトッププレイヤー

つい先日、動画サイトでフィル・テイラー(史上最強とされるダーツ・プレイヤー)の動画を観た。
正直ダーツのルールにはあまり詳しくないため、最初はなんとなく凄いという事はわかるという感じで眺めていたのだが、後々どういったルールの下でどういうプレイをしていたのかという事を確認するにつれて、その恐るべき腕前にただただ驚嘆した。

こういった得点競技におけるトッププレイヤーは、素人目には本当に信じ難い技を持っている。
修練によって人はここまでできるようになるのだという一つの好例としてご覧いただきたい。

クイズ番組の出場者たち

話は少し変わるが、同じ日にテレビでとあるクイズ番組を観た。そのクイズの内容については省略するが、出場者は高校生や大学生のクイズ自慢、芸能人のクイズ自慢、超高学歴の弁護士、予備校教師などなど。

勝ち進んだのは高校生と大学生。片や高校生クイズ2連覇の開成高校生徒。片や東京大学クイズ研究会のエース。決勝も非常に白熱した勝負となったが、軍配は高校生に上がった。
その他では芸能人のクイズ自慢たちがなかなか健闘を見せたが、予備校教師や弁護士などはあまり良いところがなかった。

人生経験も長く、知識の広さ深さでも決勝進出者の2人を上回りそうな出場者が多くいたにもかかわらず、何故彼らは敗れてしまったのだろうか?それはひとえに競技者としての錬度の差だったのだと思われる。

クイズという競技は、単純に知識の広さや深さを競うだけのものではない。
特にその番組では瞬発性が求められる出題形式となっており、敗退者たちはそれに対応できずに力を発揮できなかった。
一方決勝進出者の2名はいずれも日頃からクイズという競技に慣れ親しんでおり、知識量よりも競技者としての錬度で他に差をつけたという風に見えた。

アマチュアミュージシャンへの提言

このダーツとクイズの話を、主にアマチュアミュージシャンたちに向けた提言として応用したい。
傲慢なのは百も承知で。

技術向上は不可欠である

まずフィル・テイラーに学んでほしいのは、単純に言えばもっと練習しろってことである。

自分が音楽を始めるきっかけとなったアーティストや目標としているアーティストは大抵誰にでもあるかと思うのだが、その割にそのアーティストに並んでやろう、超えてやろうという気概を持ったアマチュアミュージシャンにはなかなか出会わない。
素晴らしい曲を書こうとは思っても、素晴らしいプレイヤーになりたいとはそれほど思ってない者が多いのだ。(このタイプは主にロックバンドやシンガーソングライターに多い)

音楽をやる事に志を持っているのなら、卓越した表現者たらんとする姿勢はあって然りだと思うのだが、恐らくは「芸術」と「スポーツ」という世間一般的な区分けが彼らに一流を志す動機を失わせているのではないか。
つまり技術の向上ばかりに目を向けてしまうとそれはもうスポーツであり、芸術とは呼べないのではないかという言い分だ。

だが優れた芸術にはやはり土台となる技術が不可欠であるし、逆に言えばスポーツであっても本当に優れたものは芸術的と見做されるのだ。フィル・テイラーのダーツ然り、である。

あなたはどこで戦うのか。その武器で勝てるのか。

そしてクイズの話から学び取って欲しいのは、競技者の視点だ。

前述のクイズ強者たちに共通しているのは、知識をクイズという競技に用いる訓練をしているという点である。
確かに競技用に知識を収めてももはやそれは記号の羅列であり、実用性を持たない形だけのものに堕するという弊害もあるだろう。それはスポーツ化で陥りやすい罠である。
だが重要なのは、彼らが知識という武器を用いる戦場をきちんと想定している点にある。

同様に、自分が何のために音楽をやっていて、その目的達成のためにどう技術や感性を磨いているのか自信を持って答えられるアマチュアミュージシャンはどれだけいるだろうか?
ギタリストならばギターが弾けるという武器を用いる戦場をどこに想定しているのか、その戦場に用いる物として武器の火力や性能は相応なのかということだ。

実のところ、芸術とスポーツは対極というわけでも、全く違うカテゴリというわけでもなく、かなり近いところにあるもの同士なのではないだろうかと思っている。
作曲家がノルマを課してとにかく曲を書く訓練をするという話を聞いたことがあるし、同様の事をしている小説家もきっといるだろう。

肉体的能力と同様に、感性も訓練によって研ぎ澄まされるものだと思う。
少なくとも、さしたる訓練も無しに事を成せる天才と自分を同じ基準でものを考えるのは危険だ。
(それくらいの気概を持つのは結構だが)

以上。
ここで語ったことが、シーンの実情が見えていない盲目者の戯言であれば良いという微かな期待を込めて。


ジンボ アラタ
Author ジンボ アラタ 98 Articles
東京都出身。日本工学院八王子専門学校コンピューターミュージック科卒業。その後は音楽とは別の道へ進むが、再び音楽の世界になんらかの形で関わって行こうと決意し、2007年より音楽イベントのオーガナイズを始める。