行き詰まりを感じているバンドマンたちへ

先日、とあるバンドのボーカルをしている方と話をした。
そのボーカル氏は現在やっているバンドに言いようのない行き詰まりを感じているようで、どうしたらいいのかわからないということをしきりに口にしていた。

バンドをやっている以上は売れたいという気持ちも当然あるが、そもそも売れているバンドと売れてないバンドの違いもわからなくなってきたという思いもあるようだ。

いいバンドなのに何故売れないのか

ライブハウスという場所に頻繁に出入りしていると、いいなと思っていても全然売れてない人たちにはよく出くわすものであるし、その逆のパターンも存在する。
「あの人たち、いいバンドなのに全然売れてないんだよなー」という感想は、そのまま自分たちに向けたものでもあったりするのではないだろうか。

個人的には「面白いんだけど、絶対売れないだろうな」と思うような音楽をやってる人たちが好きなので、あまり大きなことは言えないのだが、いい音楽をやってるのに何故売れないのかという疑問に対しては、ほとんどの場合は営業努力が足りないという回答で足りると思っている。

多くのミュージシャンは気づいていないのか、それとも見て見ぬフリをしているのかわからないが、何かを売るという行為は即ち商売なのである。売る商品が形のある物であろうが、夢であろうが、そこは動かぬ原則なのだ。

自分たちが良いと思うものをお見せして、結果としていくばくかの対価をいただければこれ幸い、という謙虚な態度を持つのは一向に構わない。構わないが、金のためにやっているのではないということを言い訳にしたところで、事態は一向に好転しないのである。

シビアな世界

ドラムライン

こういった話をする上で、優れた資料として提示したいのが『ドラムライン』というアメリカの映画だ。

あらすじとしては、ある大学の名門マーチングバンドを舞台にした、一人の天才ドラマーの成長を描いた作品であるが、実際の内容たるや完全にスポ根であり、音楽的な意味で叙情の入り込む余地などまるでない。

主人公たちが入ったバンドの練習は軍隊さながらの厳しさで、視聴者の中には楽しくやれない音楽なんて音楽じゃない!と拒否反応を示す人もいそうな程だ。

それと同時に、この映画はアメリカ式の徹底したエンタイーテイメントというものが、表の華やかさとは裏腹に、裏側は非常にシビアな世界であることも見せている。

スラムダンク

スポ根繋がりでもうひとつ、日本のバスケ漫画の金字塔『スラムダンク』にも触れておきたい。

私があの漫画でとても評価しているのは、楽しさに逃げない点である。
スポーツ漫画にありがちな展開として、徹底的に勝つことだけに固執したライバルなりチームメイトなり監督なりが、主人公や周りの選手から純粋にプレイを楽しむということを思い出させられ、初心を取り戻し、みんな楽しくやろうぜとなり、結果試合にも勝ってハッピーハッピーといったものがある。

だがスラムダンクにおいては、主人公の桜木花道をはじめとして、登場人物は誰も彼もがとてつもなく負けず嫌い。
何が何でも勝ちたい。負ければ死ぬほど悔しいという連中ばかりだ。
先に挙げたようなスポーツ漫画におけるお決まりの展開的な部分が垣間見られるのは、せいぜいインターハイにおける湘北VS豊玉くらいのもので、そもそも試合中に「楽しい」という言葉が用いられること自体ほとんどないという、スポーツものにしてはある意味異色の漫画なのだ。

逆に言えば、勝つからこそ楽しいというのが、スラムダンクにおける暗黙のテーマであるのかもしれない。

クオリティと売り上げは無関係である

この2つの作品を通して言いたいのは、いいものを作るというのは、実は売れる売れないという面には何の関係もないということだ。
こんなことを言うとたくさんの人を敵に回しそうだが、いいものを作るのは基本中の基本=当たり前のことであって、その先で売れるための要素を付け加えていくことが課題となるのだ。

雑貨屋を例にとってみよう。
個々の商品には売れ筋のものもあればそうでないものもあるが、売れ筋の商品ばかり集めていればお店が潤うかというと、そんなに単純なものではない。
ディスプレイの仕方、キャンペーン等の広告の打ち方、店舗の立地条件、流行り廃りの見極め、店内の内装、全体的な品揃え、店員の接客態度などなど、お店の良し悪しを構成する要素は多岐に渡る。

本気で商売人になれ!

ミュージシャンという人種はいい商品を作る(いい音楽を作る)ことには熱心だが、それをどう売るかということに関しては、はなはだ素人であることが多い。それどころか「売る」という行為をある種の罪悪のように見做しているタイプすら存在する。(最近は減ってきたようにも見えるが)

だが私に言わせれば、ミュージシャンはもっと商売人になるべきなのだ。そして本気で商売人になるのなら、必然的に音楽のクオリティも向上していくと思っている。

商売人になるというのはプロになるということとほぼ同義語だ。プロになるということは、必ず顧客の要求に応える=お客さんを満足させるものを提供するということに他ならない。

少しでも売れたいと思ったら、まずは上手くなってほしい。心を伝えるのはそれからだ。
どんなに心を込めた内容でも、字も文章も下手なラブレターで心が伝えられると思うかい?


ジンボ アラタ
Author ジンボ アラタ 98 Articles
東京都出身。日本工学院八王子専門学校コンピューターミュージック科卒業。その後は音楽とは別の道へ進むが、再び音楽の世界になんらかの形で関わって行こうと決意し、2007年より音楽イベントのオーガナイズを始める。