ライブハウスは今後どういう道を行くべきか

過去2回、ライブハウスの抱えている問題について書いてきたが、今回は、今後のライブハウスはどういう道を行くべきかを考えてみたいと思う。

結論から言うと、これまでのシステムを大幅に変更・破壊して一般客を増やしていく方向と、これまで以上にセクト化していく方向しかないのではないかと考えている。

一般客を増やす

まず前者について具体的な例を挙げてみる。

個人的にいつも動向が気になっている四谷OUTBREAKが、先月から入場無料ライブを始めた。
小さなバースペースでのライブならば、入場無料で投げ銭制を取っているイベントもそれなりにあるが、キャパ200人のハコでフリーイベントをやるとなると、その日の必要経費を賄うだけでもなかなか大変だ。

かなりの大冒険であるのは間違いないが、このイベントをやることで、毎回来る人が決まってしまっているライブハウスの客層をもっと拡げていこうというOUTBREAKの意気込みが見えてくる。

実際、「どこの馬の骨とも知れないバンドを観るために1,500円~2,000円ほどのチケットを買う気になれない」という意見は昔からあるし、そこに相応の価値を見出してもらえないのはハコと出演者の双方に努力が足りないと言われても仕方のない部分だ。
だったら「タダでいいから、とにかく一度来てみてくれよ!」というイベントを打って、そこからリピーターを増やしていこうという戦略は、一つのやり方として有りだろう。

これは赤字を出すリスクは当然あるものの、無料ということで人を集めやすいというメリットがある。そこからリピーターを獲得するにはまた別の努力が必要だが、その点においてもOUTBREAKは色々と工夫しているようだ。
椅子を出し、フードも出し、再入場もOKとなっている。ライブハウス初心者にもかなり優しい感じだ。

恐らく殆どのライブハウスにおいて、月のうちの何本かは赤字の日があるだろう。
そういう日を始めから店のアピールのために使ってしまう方が、同じ赤字であっても後々に繋がってくる部分に差が出てくるのではないだろうか。

当事者たちの意識がどうであれ、これまで「閉じた場所」だったライブハウスをもっとオープンにして一般顧客を増やしていく方法、これが道の1つだろう。

逆に、さらに閉じた方向へ

そしてもう1つは、よりセクト化していく、つまりさらに閉じた方向へ進む道だ。

音楽を自宅やスマホで楽しむ人と、ライブ会場に足を運んで生で楽しむ人、どちらの比率が高いかといえば圧倒的に前者である。だからむやみに客の絶対数を増やすことを考えるよりも、最大公約数の動員できっちり利益を得られるようなシステムを考えていく方がリアリティがある。

そのためには、少々値が張る代わりにそれ相応の充実した体験を提供していく必要がある。
演者には当然高いクオリティが要求されるし、店には見栄え、サービス、飲食物の味などを厳しく吟味する義務が生じる。

この業界は少々変わっていて、良い演者が出さえすれば、汚くて店員の態度が悪い店にもお客さんがやってきたりするのである。であればこそ、明らかに他所よりも店のレベルが高いというライブハウスがあれば、そこは他と差別化を図れるはずだと思うのだが。

例えば、大物歌手のディナーショーは、高級ホテルで手の込んだ料理と酒を味わいながら歌やトークを楽しむという内容で、3万円から4万円がザラの料金設定が普通にまかり通っている。
当然それだけの料金を払って足を運ぶ余裕のある層を相手取っての商売だからこそ成立しているわけだが、逆に言えば、相応のサービスが保証されているのなら高い金を払ってもいいという客層は絶対にいるのである。

ライブハウスのレベルでチケットが3万も4万もするイベントを組むのは無謀だが、普段はチケット2,000円前後のイベントに出ている演者を呼んで、2,500円~3,000円のイベントを組むことは出来るし、やり方次第でちゃんと動員もできるはずである。

どちらの道を行くのか

ここまでの話を要約すると、ライブハウスが今後目指していくべきはディスカウントストアなのか、高級店なのかということだ。(ただしここで主な対象としているのはキャパ200~300くらいの規模で、現状あまり上手く行ってないという店の話なので、必ずしも全部の店が変わるべきとは思っていない)

どちらの道を取るべきかは、立地・内装・設備などにかなり左右されるので一概には言えないが、恐らく大多数のライブハウスはディスカウントストアを目指していくしかないと思っている。
だがそうなると現状では顧客の数が圧倒的に足りないし、ライブハウスが本気でその方向を目指して変わって行ったとしても、劇的に客足が伸びるとは考えにくい。
結局ある程度の淘汰は避けられないというのが個人的な予想。

ただし前回の記事でも書いたが、この業界は必ずしも合理的な人ばかりで成り立っているわけではない。むしろそうでない人が多いので、意外とみんなしぶとく生き延びていく可能性も十分に考えられるが…

それはさておき、自分自身の職場に関して言うと、今後は高級店を目指したいという意識がある。
もちろん若い人たちにも継続的に出演して欲しいし、若いお客さんにも来て欲しいのだけど、やり方は変えて行くべき時期に来ていると感じる。

それに、「若いお客さん=金を持っていない」という考えも間違いで、それは昨今の大型フェスの盛り上がりを見れば一目瞭然だ。「この日は絶対外せない」というイベントがあれば、何を置いても駆けつけるというバイタリティのある連中はそれなりにいるのだ。コミケだってそうじゃないか。
そういう年1回規模で何万円も使わせるようなイベントではなくとも、もう少し小規模で質の高いイベントを質の高いサービスと共にコンスタントに提供できるようにしたい。

質の高いサービスを提供するという点においてはまだまだ課題は山積みだが、自分がお客さんだったらという意識を常に持って励む所存。頑張るのです。


ジンボ アラタ
Author ジンボ アラタ 90 Articles
東京都出身。日本工学院八王子専門学校コンピューターミュージック科卒業。その後は音楽とは別の道へ進むが、再び音楽の世界になんらかの形で関わって行こうと決意し、2007年より音楽イベントのオーガナイズを始める。