お題は6月28日、Zher the ZOO YOYOGIで行われた『ホラ吹き団長と秘密のサーカス』。
簡単にこのイベントの経緯を説明すると、今回の3組(井乃頭蓄音団、▲s、ツィゴイネル曲芸楽団)でブッキング希望といった日比谷カタン氏のツイートがあり、やってみようと動いてみたら、なんと日程が合ってしまったという話。奇跡的?
大人の事情により、今まで自分が組んだ中でチケット最高値のライブになってしまったが、それでも多くのお客さんに来ていただけた。ありがたや。
井乃頭蓄音団
ライブは井乃頭蓄音団から。
松尾さんは事あるごとにソロでZher the ZOOに出てくれていたのだが、バンドフルメンバーでの出演は1年ぶりくらいだろうか。あの頃とは面子も変わってるし、今の井乃頭蓄音団というものがどうなっているのか、俺も全然わかってなかったんだけど…
これが予想を遥かに上回って良かった。簡単に云えば熱気。
今日の松尾さんはロックスターだったよ。お客さんもノリが良くてワイワイ盛り上げるから、バンドも上手い具合にそこに乗っかって、どんどん熱気が出てくる。まさかこんなにロックなバンドだったとは。なによりロックな音の方がより井乃頭蓄音団のエッセンスを感じられるものだとは思わなかった。
井乃頭のエッセンスと云えばやっぱり歌詞。切ない。ずっこけてて、かっこ悪くて、とにかく切ない。こういう歌はフォークな感じが合うと思ってたし、実際これまで弾き語りの形で何度も観てきたから、そこに疑問の余地はなかった。
でもロックな音に乗せて聴くと、むしろこの哀切感が増幅されるという意外な事実。きっと「シュール」なんだろう。フォークな音にあの歌だったら、普通に相性の良いもの同士で1+1=2の効果しか生まれないが、ロックな音だとどことなく違和感があって、逆に歌詞の存在感が浮かび上がって、効果が3にも4にもなる。面白いな。
井乃頭のおかげですっかり空気が温まったし、今日のイベントの起爆剤になってくれたと思う。自分の想像を超えるライブをやってもらえるのは本当にブッキング冥利に尽きるというもの。ありがたや、である。
▲s(ピラミッドス)
お次は▲s。ステージではなく客席からポンポコ登場し、ゆるゆるとステージへ向かう。コント仕立てで始まるライブ。うむ、今日もゆるい雰囲気だ。音楽は東欧的でとてもホットな雰囲気なのに、それらと彼らの持つゆるい雰囲気が殺し合わないのは何故だろう?人徳?多分同じことやってても、外しちゃうとこは思いっきり外してしまうと思うのよね。▲sはそれがない。ゆるさがきちんとキャラとして成立している。素敵よねぇ。ずるいわよねぇ。
とはいえ、盛り上げるとこはちゃんと盛り上げる。今日はツィゴイネルと対バンてことで、久しぶりにタカダアキコとコラボレーション。最近はサフィさんばっかり観てたもんだから(好きだけど)、久しぶりに小柄、はしっこい系のダンサーとのコラボは新鮮だったな。実はアキコさん初見だったわけだが、この人のダンスはスピーディかつ重みがある。重いっつうのはふわふわしてないってことで、曲線的な動きなのに直線を感じさせるってことかしら。観ててベリーダンスに対する意識が変わった。
その後は男性諸氏お待ちかね、ムッチリムハムハサフィの登場。今日もダイナマイトなバディを振りまくよ。この人の場合は単純に肉体のボリュームが観る側に重量感を伴って迫ってくる。ゆさゆさ(((´▽`)))
安心の▲s節を堪能させていただいた。
ツィゴイネル曲芸楽団
そしていよいよツィゴイネル曲芸楽団の登場である。
ツィゴイネル曲芸楽団は中ムラサトコ(歌、足踏みオルガン)、タカダアキコ(ダンス)、おこたんぺ(ジャグリング)、日比谷カタン(ギター)、向島ゆり子(ヴァイオリン)、吉田悠樹(二胡)、平井ペタシ陽一(ドラム)、ドゥイ(映像)によるサーカスのようなバンド。
小さな渋さ知らズみたいなもんかもしれない。元々は何かの舞台のために結成されたんだとか。
だからライブハウスに出演すること自体がレアな集団。
自分自身も初ツィゴイネルだったわけで非常に楽しみだったのだが、転換中にドリンクカウンターに行列が出来てしまい、忙しくて前半はほとんど耳だけでライブを聴く羽目に。あああああ。まぁ後半はちゃんと観られたけど。
結論から言うと、もう感動した。凄い顔ぶれだし、もちろん良いライブになるとは思っていたが、何せ濃いし人数も多いし、なんというか玄人向けな内容になるんだろうなと想像してたんだけど、もう素直に凄かった。
タカダアキコ、おこたんぺによる身体表現、向島ゆり子、吉田悠樹による妖艶なストリングス、集団の中にあっても特異な存在感を放つ日比谷カタンなど、見所は色々あったんだけども、本当に心を打たれる表現というか、率直なパワーを感じたのは中ムラサトコの歌。サトコさん本当にぱねぇ。
ライブは身体表現ありき
今日のライブを観て思ったのは、やはりライブは身体表現ありきということ。身体表現と言うのはダンスやジャグリングなどの狭義の話ではなく、楽器を弾く、歌うといったことを含めて。結局電子音楽でもない限り、演奏とは肉体的行為であって、そのレベルが高くなければ感動はあり得ない。
例えばギターの速弾きはスポーツか芸術かなんていう低次元な話がある一方で、文字通りのサーカス(シルク・ドゥ・ソレイユみたいな)を観て、こんなのはただのスポーツだと怒る人はあまりいないと思う。
優れた身体表現はそれだけで感動を生む。逆に言えば、低レベルな身体表現を通して高度な精神性を表現するのは難しい。
本当に優れた演者たちによる、優れたライブに立ち会えたことを感謝したい。自分のライブ観戦史の中でも稀に見る内容だった!!